

株式会社PCC ロゴマーク
Direction: Takeru Kuwahata
Design: Masaru Ishikawa
桑畑
あとは、表現の引き出しが増えましたね。自分のアイデアを具体化できるだけじゃなく、相手のアイデアも具体化できるようになったので、単純に発想領域が二倍になったと思っています。前は相手のアイデアは「否定する対象」でしかありませんでしたから。
本多
素晴らしいなぁ、まさに「創発」。
桑畑
本多さんの「コーアクティブコーチ」の概念というのか、「答えは相手の中にある」というのがコーアクティブコーチの原理っておっしゃっていたんですけど、僕がそれをさらに自分なりカスタマイズして「事業の答えはクライアント(相手)の中にある。そしてそれを表現する方法は私たちにある」というスタンスで仕事をしています。
本多
なるほど
桑畑
料理のシェフに例えると、僕らは野菜を耕しているわけではありません。野菜を作っている人、すなわちクライアントが「この野菜をこういう人達にこんな形で味わって欲しい」とちゃんと伝えてくれないと、こちらは料理できません。
本多
それを掴んできた。なるほど。素晴らしい。
桑畑
一番の気づきは、相手は「僕の特別さ」を最上位として求めていないということ。「特別だね」とか「すごいアイデアね」とか言ってくれるとすごく嬉しいけど、そこは相手が一番に求めていない。なのに無意識にそこをメインに置いてしまうときがありますね、癖で。
相手が欲しいのは、僕の突飛さやインスピレーションよりも、まず「自分たちのやりたいことをきちんと聞いてもらえて共感してもらえた」という体験です。ここが相手が欲しいことであり、大切なスタートラインですよね。そこの基盤を作らずにアイデアをどんどん提供しても相手の関心と大方ずれます。
相手が見えていない自分本位の提案を他人がやっているのを客観的に観れば気が付きます。しかし自分がプレイヤー(当事者)として中に入っちゃうと、ほとんど見えなくなります。
本多
見えなくなりがちなのはよくわかる気がするけど、なんでだろうね、それって?
桑畑
僕の場合、邪魔しているのは「自分がその場で一番になってやろう」という気持ちですね。
それが、今まで自分にとって強みにも弱みにもなっています。
本多
はいはい。
それを「手放す」ことへの抵抗はあったんですか?
桑畑
「自分が一番になってやろう」という気持ちへの執着は未だにありますよ。ただ、僕は「成し遂げたいこと」がはっきりしたときに執着は手放せると思っています。逆に「ただ無条件に手放せ」となると「それは手放せないよ」と思ってます。だから自分が率先してプロジェクトのゴールを明確にし、共有できて互いにアライン(同意)したら簡単に手放せますし、そのゴールを無しに手放せと言われても難しいです。
本多
なるほど、なるほど。いいじゃないですか。どういう瞬間にコミットできたという気になるの?
桑畑
本当はビジネスライクに「目標が数字化できたとき」と言いたいところですが、僕の場合は「ゴールが映像化できたとき」です。
本多
ほう、映像!例えば?
桑畑
例えば、ただ言葉だけではなくて、喜んでいるところ、誰と誰がどういう感じで喜んでいるのかを描けたら、もうゴールが描けています。驚いているところでも良いですし、感動しているところでもOKです。とにかく自分の目の前に映像として描けたときですね。
本多
なるほど、そうするとコミットできたって感じ?!
桑畑
はい。まさに。あとはその映像化したゴールから逆算していく中で、自分のアイデアが入っているか?とか自分の独自性はあるか?ということは大した問題ではなくなるというか、考えなくなります。手放すというより、考えなくなる。
本多
なるほど、なるほど。
新しい思考のパターンというか、新しいプロジェクトの進め方になったって感じ?
桑畑
はい。そうですね。
本多
以前はどうだったの?
桑畑
司会をしているはずが、熱くなりすぎていつのまにか自分の意見を押し通すことに走る某討論番組の司会者のようで・・・。
初めは冷静に意見を識別したり、意見をまとめているのに、最終的には自分にとって都合のいいようにまとめてガッとかぶせるみたいな感じでした。「最終的に自分の意見を押し通すためにみんなの話聞いていたんだな」って端から見たらわかると思いますよ。
本多
なるほど、そういうことなのね。今は相手に対してどういう体験を提供してるの?
桑畑
「気持ちを汲んでもらえた」「演出してもらえた」「仲間(同志)に出逢えた」ような感覚だと思います。
わかりやすく言うと速度が違おうが、タイプが違おうが、乗り物が違おうが、同じ方向を向いているという感じです。
本多
そうだろうなー。ほう、なるほどなるほど。
桑畑
相手が何に対してお金(報酬・対価)を払うのか、を3年間ずっと探求しています。
僕自身営業を受ける立場でもあるので、自分のところに営業がきたときに苦渋の決断をします。「本当に良いプランだと思うんだけどごめん」とか、「予算上無理です」と。
本当に相手の提案内容が素晴らしくても「No」と言わなくてはならないシーンはたくさんあります。クライアントもうちに広告を頼むのは、場合によってはギリギリのところで「このお金でどうにかしてくれ」ってくることもあるわけです。
「それは無茶だ」というのも中にはありますし、場合によってはお断りすることもありますが・・・ともかく相手の提案を信じて費用を払う選択をするのが本当に大変だということが自身の体験からもわかってきました。
誠意をもって、その費用、時間の中で最大の成果をとるには、何をどうしたらいいのだろう、というのは必ず考えるようになりましたね。
本多
素晴らしい。それはコーチングからの影響じゃないかもしれないけど、本当にやってよかったんだなあ。
桑畑
本多さんのコーチングセッションで何回か答えが出なかったセッションがあるんです。僕がプライベートで悩んだりとか、本多さんにいろいろ言っていたんだけど、時間を延長してもどうするか決まらずに終わったセッションが多分2回くらいあったのを覚えていますか?なんかモヤモヤのまま終わったような。
本多
あぁ、はいはい、体験としては思い出せるな。
桑畑
あれが、数日後に考えると、大事なセッションだったなと思うんですよ。ある意味あれが本多さんのコーチングの一つのすごいところなんじゃないかと。
本多
おー、その心は?
桑畑
その心は、「本当に聞いてもらえただけでありがたい」というのが最後に残るんですね。
本多さんの貴重な時間を使って聞いてもらえることへの感謝の気持ちが最終的には残るんです。人生経験豊富な本多さんが僕の話を反論もせず、説得もせず、ただ聞いてもらえるというのは本当にすごいことです。
「これだけ本多さんと話して結局結論でないんだから、まぁしょうがないか」ということで、次のことを考えようという気持ちになります。
本多
なるほど。